洋菓子屋「菊屋」のおはぎ【電子書籍】[ 川崎 キヨ ]

＜p＞洋菓子屋「菊屋」が約100年の歴史に幕を下ろした。

＜/p＞ ＜p＞3代目の福太郎さんは、最後のお客さんを見送ると、のれんを下ろして店に入り、椅子に重い腰を下ろした。

＜/p＞ ＜p＞悩んで悩んで決めたことだったが、やはり店を閉めることは残念でならない。

＜/p＞ ＜p＞そんなことを考えていると、落ち込むばかりだ。

＜/p＞ ＜p＞涙も出てくる。

＜/p＞ ＜p＞ふと、顔を上げると、そこには孫のつむぐが立っていた。

＜/p＞ ＜p＞つむぐは6歳で、両親が共働きのため、母親が迎えに来るまで、いつも福太郎さん夫婦が面倒をみていた。

＜/p＞ ＜p＞実は、福太郎さんの奥さんが夫を気遣って、孫を店によこしたのだ。

＜/p＞ ＜p＞そんな孫に福太郎さんは何が食べたいか尋ねた。

＜/p＞ ＜p＞つむぐは迷わず「おはぎ」と答えた。

＜/p＞ ＜p＞つむぐは店のおはぎが大好きだった。

＜/p＞ ＜p＞でも、ずっと抱いていた疑問。

＜/p＞ ＜p＞どうしてここは洋菓子屋なのに、おはぎがあるんだろう……。

＜/p＞ ＜p＞おはぎは和菓子なのに……。

＜/p＞ ＜p＞つむぐは思い切ってそのことを福太郎さんに尋ねた。

＜/p＞ ＜p＞すると、福太郎さんは語り始めた。

＜/p＞ ＜p＞この店を開いたじい様のこと。

＜/p＞ ＜p＞じい様の母親の菊さんのこと。

＜/p＞ ＜p＞若き日のじい様の、東京、イギリスでの修業時代のこと。

＜/p＞ ＜p＞そして、なぜ洋菓子屋なのに、おはぎが置かれるようになったのかを……。

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